「すっごく楽しかった!また来ようね!」
弾ける笑顔で、唯は凛の顔を覗き込む。
「もう……ちょっと、はしゃぎすぎじゃない?年上なんだから、ちょっとは落ち着きなよね。」
はぁっと大きな溜息をつきながら、唯を一瞥する。
スタオケメンバーは関西の有名ホテルでの公演依頼があり、その公演を終えた次の日、帰路に着く
まで、銀河の提案で各々、自由に時間を費やすこととなった。
専ら、銀河が関西の食文化に触れるという名目の下……食い倒れ目的なのは明白であったが。
そんな中、唯はどうやって時間を過ごすか、考えていたところ、凛が声を掛けた。
「ねぇ、有名なテーマパークがあるから、そこ、行ってみない?」
「――!?」
唯は、まさか凛が声を掛けて来るとは思っていなかったため、あまりに驚いて、目をぱちくりと
瞬かせる。
「もう――別に……変な意味じゃないからね……!」
凛は思わず赤くなって、そっぽを向いた。照れている時に、凛は人とは目を合わせない。まるで、
気位の高い猫のように。
「ほら……!テーマパークなら、今後の演奏に役立つパフォーマンスとか、見られるかもしれない
でしょ?インスピレーション、何か感じられるかもしれないじゃない?」
「修行、ということですね……?」
「もう……何でもいいから。僕が誘っているんだから、来ない、なんて言わないよね?」
「は……はい。」
こうして、二人は有名テーマパークを遊び倒すこととなる。
世界中の映画や人気アニメーションを舞台に彩られたテーマパークは、華やかで、非日常の世界が
広がっており、来園する者の心を捉えて離さない。
凛と唯、この二人もまたその夢の虜になった。体験したことのないアトラクション、映画や物語から
抜け出して来たような、そのままの建物や造形物に、二人は夢中になった。究極のエンターテイメントを
目の当たりにして、二人は勉強や修行……などと言っている暇もなかったのである。
途中、二人は土産物などを扱っているショップに立ち寄り、お揃いのTシャツを買って、着ている服の
上から被った。
「わーい!凛くんとお揃いだね!凛くんも、すっごく似合ってる!凛くんのTシャツ姿って、すっごく
レアだよね!」
目を輝かせて微笑む唯に、凛はしどろもどろになりながら、それでも唯に照れ隠しのデコピンをした。
「凛様、痛いですぅ~!!」
「もう……コンミス!いい年して、はしゃぎすぎ!」
そう言ったものの、にっこり微笑むと、唯の手を引いた。
「さ、コンミス、まだまだこれから、だからね!」
この後、更に唯は凛に振り回されて……冒頭に戻るのである。
日が西に傾き始め、園内も優しい夕焼け色に染まる頃、凛と唯はテーマパークを退園し、スタオケ
メンバーと合流するために移動することに。
「すっごく楽しかった!また来ようね。」
弾ける笑顔で、唯は凛の顔を覗き込む。
「もう……ちょっと、はしゃぎすぎじゃない?年上なんだから、ちょっとは落ち着きなよね。」
はぁっと大きな溜息をつきながら、唯を一瞥する。でも、本当に満足そうに、
嬉しそうに笑う唯を見ると、共に時間を過ごせたことを、内心、とても嬉しかった。
「ねぇ、僕の目標決めたから、聞いてくれる?」
二人並ぶ長い影が路地に落ちる。
「僕がもっと有名になったら、このテーマパーク貸切にする。」
「へ!?」
唐突なあまりにもビッグな宣言に、変な声が飛び出す。
「……もう……!このテーマパークを貸切にして、君を独占するの。」
夕陽のせいなのか、それとも、それ以外の理由なのか、凛の頬が真っ赤に染まっている。
「だから、ちゃんと僕のこと、見ててよね。もっと……他の男なんか目に入らないくらい、夢中に
させてあげる。」
「……!」
今度は唯が真っ赤になって、頬の火照りがおさまらない。ぴったりと自分の手を頬に当てて、瞳を
閉じた。
「……ほら、コンミス!急がないと、みんな待ってるよ!」
凛は唯の手を取ると、さっさと歩きだした。
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君の隣は僕だけのものだから――。まだまだこれからなんだから、ちゃんと、
目を逸らさずに見ててよね、コンミス。
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