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朝、目が覚めて、事務所へと出勤しようとすると、体調が優れない自分がいることに気が付いた。 (これはもしかして――……。) この数日、恋人の九条天はロケのために、家を空けているが……今日戻って来ると、昨夜ラビチャが あったばかりだった。 (……天くんが戻って来るというのに……私が体調不良では、とてもマズいですね……。) だからと言って、下手に誤魔化せるわけではない。かと言って、今の状況で事務所に行っても、迷惑が 掛かるだけだ。 申し訳ないけれど、今日は一日、大事を取って休むことにした。先に病院へ行って、風邪薬をもらいに 行くことに決めた。 スマホから小鳥遊事務所に電話をすると、穏やかな声が耳元で聞こえた。 「あぁ、今日はゆっくり休んだらいいよ。あとのことは、俺に任せて。お大事にね。」 同じ事務所で働く有能事務員・大神万理が、紡のことを気遣う穏やかな 声が心地よい。紡は心の中で何度も感謝をしつつ、まずは病院へと向かった。
病院からの帰り道――。
じわじわと上がってくる熱と戦いながら、とりあえず、買い出しを ******* 自宅へと戻ると、紡を中へ入るように促すと、ようやくそこで天は変装を解いた。「はい、お疲れ様。紡ちゃん、座ってて。体調……崩しているんでしょ?」 紡は言われるままに、ソファーに腰を下ろした。 「どうして……天くんには、何もかも見抜かれてしまうんでしょう……?」 「どうして、って……。ボクもロケが終わって、帰宅する途中で、御飯を調達しに来たら、フラフラの キミを見掛けたからさ。明らかに調子悪かったでしょ?」 天は紡の額に手を添えると、天のひんやりとした肌が今の紡には心地よかった。 「天くんの手……気持ちいいです……。」 「ちょっと待っててね。」 天は台所に向かうと、冷蔵庫からレモンを取り出し、それを輪切りにし出した。 そして、蜂蜜を取り出すと、輪切りにしたレモンと蜂蜜をマグカップに入れて、その上からポットで お湯を注いだ。ふわりとした優しい甘さの蜂蜜と、清々しいレモンの香りが漂った。 「はい、紡ちゃんの分。ホットレモン。喉にいいと思うし、あったまると思うから。」 湯気が立ったマグカップを受け取ると、紡はふうふうと冷ましながらも、ホットレモンを少しずつだが 流し込んだ。甘酸っぱさが心地いい。 「おいしいですね。天くん、ありがとうございます。でも……ロケから戻って来て早々にこんなこと させてしまって、ごめんなさい。」 「謝るくらいなら、早く元気になって。ほら、飲み終わったら、ベッドに行こう。きっと、キミも 忙しかったから、疲れが出たんだよ。だから、これは、神様がくれた休日って思わないと。」 天は子供をあやす様に、紡の髪を撫でた。紡を見つめる眼差しが甘い。天は一旦懐に入れた相手は、 とことん甘やかしたいタイプなので、この後、紡の熱が下がるまで、献身的なまでに看病をするの だった。 |
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書いていたら、日付変わってしまいました。 「Winter Day」ということで、「冬の日常」のワードパレットをお借りしました。 一覧画像はこちら。→Winter Day 配布元:憂様【Twitter】id=torinaxx テーマ:ホットレモン 「あったまる」、「風邪」、「撫でる」 多分、ワードパレットの作品はまとめて展示したいんだけれど、どう展示するのかちょっと悩んでは いる。多分、天紡だけでページを隔離した方がいいんだけど、そうなると階層が深くなって、そこに 辿り着くまでが煩わしいかなぁ……。 とりあえずは、ワードパレットの画像をリンクしていますので、また気が向いたら書いていこうと 思います。 (2024年1月8日完成、1月9日サイト掲載) |