|
本土より一足先に新しい季節を迎える北海道に、IDOLiSH7の和泉三月とTRIGGERの九条天は 降り立っていた。 約一か月もすれば、二人がG4Yの札幌公演での現地MCを務めるところとなり、その前に下調べを しようという話になったのである。プロ意識の高い二人は、当日までにいろいろと盛り上げようと、 ツアーの合間を縫って、今回の撮影となったのである。 また、G4YのSNSにアップするための宣材写真を撮るためにも、また景観の美しい紅葉の季節を ファンと共に過ごしたい、という二人の願いもあってのことである。 IDOLiSH7とTRIGGER、それぞれのマネージャーが着いて行くべきところだったのかもしれないが、 今回はIDOLiSH7の小鳥遊紡が同行することとなった。他のマネージャーたちが軒並み忙しく、また、 些か面倒なトラブルの事後処理などもあったため、彼女が二人の面倒を見ることとなったのである。 飛行場から一旦ホテルに荷物を預けると、予めホテルで手配していたレンタカーに二人を押し込んで、 紡は撮影場所である現地に向かった。今日の撮影場所は、札幌から少し離れた場所にある渓谷が美しい 自然公園である。険しい岩肌が作り出す自然の荒々しさと、錦を織り重ねたような繊細でありながらも、 煉獄のような燃える紅葉を楽しめるスポットとして有名であった。炎のように燃える紅葉、そして煌めく 金色に輝く紅葉、そして間に間に見える差し色の常緑樹のコントラストが美しい。晴れていれば、空の 青さと滝や水の美しさも楽しめる、極彩色に溢れた絶景である。 「わぁ~、すっげーな!」 車を降りたところで、三月はぐっと伸びをしながら、目に映る絶景に感嘆の声を漏らした。 「噂には聞いていたけれど、本当に綺麗だね。ちょうど見頃。」 天も三月に続いて車を降りると、深呼吸をした。紡も車から降りると、清々しい空気と美しい景色に 日頃の疲れも吹き飛びそうだ。 「きっと、お二人のことだから、素敵な撮影になるでしょうね。とても楽しみにしています!」 紡は二人を見ながら、深々と頭を下げた。 「今日は、どうぞよろしくお願いします。」 「ふふっ、何言っているの?小鳥遊さん。こんな素敵なロケーション、用意してくれてありがとう。」 「そうだよ、マネージャー。忙しいのに、本当にありがとな!」 天も三月も、自然と笑顔が零れていた。その後、撮影スタッフと合流し、撮影は順調に進んだ。 普段、スタジオやライブで見る二人の姿も、それぞれのよさがあり、紡は彼らのパフォーマンスを 見るのがとても好きだったが、こういった旅先で見せる姿も、素の姿を見られて好きだった。 (プロ意識の高いお二人のことだから、きっと次の公演も大丈夫。) 紡は今日の撮影を眺めながら、来るべき次回公演が成功するであろうと、確信したのであった。 ******* 撮影が終わり、スタッフたちと別れ、紡、三月、天の三人はホテルへと向かうために、再びレンタカーに乗り込んだ。日が傾き始め、山々を織り成す錦の梢が、一番燃える時間帯である。 「この時間帯の紅葉もまた、綺麗ですね。」 天は目を細めて、名残惜しそうに眺めている。 「刻々と変わる紅葉、こんな景色で撮影出来てよかったなぁ~。」 三月も嬉しそうに、ニコニコしながら眺めている。 「ねぇ、小鳥遊さん、まだ時間あるでしょ?」 「え……?えぇ、夕食まではまだ時間はありますが。」 天の質問の意図が分からず、紡は首を傾げながら答えた。 「ボク、甘いものが食べたい。カフェに行かない?」 「九条、お前、夕飯前に食べたら、せっかくの御馳走、うまさ半減するぞ?」 三月は寮で食事を作ることが多いこともあり、真っ先に天に忠告した。 「和泉三月は、甘いもの、気にならないの?キミの家って、確かケーキ屋さんだったよね?」 「まぁ……気にならなくはないけど……。ってまぁ、いっか!旅先くらい、料理作ること 忘れて、食べる専門になってもいいのかもしれないなぁ。」 ******* ホテルへの帰路は、思わぬ寄り道をすることとなった。夕陽に照らされた紅葉のトンネルを潜り抜けながら、途中にあった道の駅に立ち寄った。 道の駅には、産地直送の野菜や果物なども販売されていたが、何と言っても、最近では古い民家などを リノベーションしたカフェが流行りである。立ち寄った道の駅に併設されていたカフェも、古民家を 改装し、木材の温かさを生かした安らぎのカフェだった。 三人は窓際の四人席に座り、三月と天、その向かいに紡が座った。 「お、うまそうだなぁ~。」 メニューを早速見ながら、注文する商品を頼む。 「ボクはこの手作りパウンドケーキとキャラメルミルクチャイで。」 「早っ!しかもめっちゃ甘そう!」 「私はあまりにも目移りしそうで……。すぐに決めますね……!」 三月と紡はメニューと睨めっこしながら、それぞれ注文するものを決めると、店員を呼び、紡が まとめて注文をすることになった。 「手作りパウンドケーキとキャラメルミルクチャイ、オレンジのタルトとオリジナルストレートティー、 それから……私がホワイトチョコケーキとカフェオレでお願いします。」 注文を復唱し、店員が立ち去るのを見届けると、天が口を開いた。 「何だかんだで、和泉三月、なかなかノリノリじゃない?」 「だってよー、やっぱりこんな雰囲気のいいカフェ、更に料理もデザートもおいしそうだったし、 作り手としては、気になって当然じゃん?」 しばらくして、それぞれのメニューが運ばれて来た。 「あ、待って下さい。皆さんのオフショット、撮っておきますね。」 紡はカメラを用意すると、ぱしゃりと思い出の一枚を撮った。 優しい明かりの灯るカフェで、美味しいスイーツを頬張った三人は、ほっと寛げる時間を過ごした のだった。 ******* ホテルに着いた頃には、すっかり日も落ちていた。この日は、天と三月は少し広めの和室を、紡はシングルのベッド付のシンプルな部屋に宿泊することとなっていた。 夕飯は三月と天の過ごす和室に三人分運んでもらえることとなり、三人は美味しい料理に舌鼓を 打ちながらも、今日の撮影の話や、最近の二人の近況を話したりしていた。 三月はお酒が入ったこともあって、一層場を盛り上げてくれたこともあり、笑いが絶えなかった。 「では、私はこれで失礼しますね。今日はとても楽しかったです。ありがとうございました。」 紡は一礼すると、すっと出入口に向かった。 「ちょーっと待ったああああ!」 三月が紡を引き止める。振り返ると、酔いの回った三月が、紡を引き止めたい一心なのか、紡を 引き止めるため、片手を前に差し出し、静止させようとポーズを取っている。唐突の叫び声に、隣にいた 天は驚いた様子で、きょとんとしている。 「はい……?三月さん、どうかされましたか?」 「な、マネージャー、俺たちもこれから温泉行って来るし、その後、ちょっとでもいいから、遊ぼうぜ。 仕事って言っても、せっかくの旅行なんだからさぁ。」 三月は、いつの間にか用意していたトランプを手に、紡にお願いをする。 「ねぇ、小鳥遊さんも疲れているなら、ちゃんと主張した方がいいよ。多分、このままだと和泉三月の ペースに飲まれるよ。ボクたちは少し遊んでから寝るつもりだけれど、お疲れのキミまで巻き込む つもりはないから。」 気遣いの感じられる天の言葉がありがたかったが、紡もせっかくなので、もう少しでいいから一緒に いたいと思った。 「分かりました。では、お風呂から戻られましたら、御連絡下さいね。私も、戻りましたらこちらからも 御連絡しますので。」 ******* 大浴場に入ると、思っていた以上に人もまばらだった。三月と天は髪の毛と体を洗うと、大浴場の広くて大きな湯船に浸かった。 「ん~っ、気持ちいい。」 「やっぱ、温泉って開放感あっていいよな!」 二人は一日の疲れを癒すべく、湯船に浸かった。 「温泉って、あまりにも熱すぎたりするから長く入っていられないことも多いけど、ここはちょうどいい 湯加減だね。」 天もお湯を掬ってみては、さらさらと指の隙間から滑り落ちるお湯を見つめた。 「なぁ、九条。マネージャーのことなんだけどさ。」 「……?小鳥遊さんがどうかしたの……?」 「すっごーく、可愛いって思わね?」 天は「は?」と虚を突かれたため、唐突に答えは出せなかったが、少し考えて、 言葉を選んで答えた。 「……そうだね。確かに、ちょっと陸と似たところもあって……おっちょこちょいだし。でも、仕事に 対しては一生懸命やってくれるし。あまり、そういう目線では見たことはなかったけれど、アイドル としてデビューしてもおかしくはなかったのかもね。」 「だろ……!?」 「彼女がどれだけ芸に秀でているかは知らないけれど。歌や演技が駄目なら、モデルやグラビアなら 何とかなるかもね。でも、小鳥遊社長が娘を溺愛していそうだから、そういう表舞台には 出したがらなさそうだね。芸能界の厳しさも知っているだろうから、尚更。」 天も普段の紡を思い浮かべながら、三月の質問に答えていく。 「あー、でも、ちょっとマネージャーのアイドルしている姿、見てみたかったな。 こうさ~、フリフリの衣装とか似合いそうだよな!?な、九条。」 「もう、ボクにまで同意を求めないで。確かに可愛い衣装も似合いそうだけど、もう少し品のある スタイルでもいいんじゃない?」 天は適当に受け流しつつも……ちょっと考えた。彼女がアイドルになったら……。 あの、陸と雰囲気がそっくりで、無邪気な笑顔を見せられたら……やっぱりいろいろ断れない。 「……やっぱりダメ。」 「え……?」 今度は三月がぽかんとして、天を見つめる。 「彼女がアイドルなんて、絶対にダメ。変な虫が付いたら、どうするの!?」 ある意味、真面目に紡のことを心配している天の言葉を聞いて、三月は笑い出した。 「九条……!お前って本当に過保護だよな……!陸とも似ているって言っているから、被ったんだろう けどさ。」 「……もういい。ボク、先に上がる。」 怒ったのか、照れ隠しなのか、真意のほどは分からなかったが、天はすたすたと大浴場を出て行こうと する。 「ああ、待って!オレも行く!」 三月が後ろから足早に追い掛けた。
三月と天が部屋に戻って程なくして、紡からのラビチャが三月のスマホに届いた。 ピーンポーン……。
部屋の外のインターホンが鳴った。
それから、どのくらいの時が経ったのだろう。 ******* 「マネージャー、昨夜はごめんな。」紡が本来寝泊りするはずだった部屋に、三月と天が訪れたのは、朝食前だった。 「……。まさか、お二人があんなにも激しいなんて……。」 昨夜のことを思い出して、紡は顔を赤らめた。 「でも……可愛いキミが罪作りなんだよ。本当に、いけない子。」 「……予備日で一日、多めに取っておいてよかったです。明日帰りますが、今日は皆さん、のんびり 過ごして下さいね。」 ちょっと疲れた顔を見せている紡に、三月と天は申し訳なく思い、その後、その日一日は紡を癒す ためにあれこれプランを練った二人だった。 |
|
「お兄ちゃんサンドで紅葉🍁の綺麗な中、3人で歩かせたいなぁ……。」って思い付いたのが、 ちょうど企画でお兄ちゃんサンドを描いた頃。今見たら、2021年だったね。札幌公演が決まって、 やっぱり「お兄ちゃんサンドを書きたい。」ってなったのが、今年の札幌公演のチケット🎫が取れて から。随分と長い間、ネタを寝かせていたものだよね……🤣🤣🤣 自分でも書いていてあれなんですけど、最後までH🏩💕するとは、夢にも思っていませんでした🙄 推しには幸せ🍀😊💕であってほしいし、いちゃいちゃ💕してほしいです。 (2023年11月7日完成) |