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事務所から帰宅した紡は、リビングでノートパソコンを立ち上げると、テレビ局から頂いたIDOliSH7が この度携わったCMの録画画像を、食い入るように何度も何度も見ていた。 今回彼らが関わったのは、今流行りの純喫茶のトレンドアイテム・ソーダ水を手軽に楽しめるように、 ペットボトルとして販売することになり、そのCMに、IDOliSH7が抜擢された。そのソーダ水は、とある 有名な純喫茶の看板商品の一つであり、定番のメロンソーダのみならず、虹色のカラフルなソーダ水を 提供するお店で有名であった。また、その純喫茶は、ソーダのみならず、焼き菓子やケーキも大人気で、 人気のあまりに、最近では有名百貨店の食料品コーナーでもケーキや焼き菓子を販売するほどの人気店で ある。そして、その有名店のCMに、IDOliSH7が起用されたのだから、紡もCMの仕上がりを楽しみにして いた。 (こ……これは!売れますよ、絶対……!!) 紡は「よし!!」っとガッツポーズをしたところで、はっと人の気配に気が付いて、振り向いた。 「……――ただいま、紡ちゃん。」 そこには、TRIGGERのセンターであり、恋人でもある九条天が、腕を組んで立っていた。ちょっと 何かを考えるかのように、片方の手は顎に添えられて、紡を見つめている。 「お疲れ様でした!」 慌てて、天の傍に駆け寄ると、天はすっとキッチンに向かった。 「わ……わ!ごめんなさい……!お腹、空いてますよね!!今からすぐに作ります!簡単なものになって しまいますが!!」 天の後を追ったが、紡はキッチンから追い出されてしまう。 「いいから、ボクに任せて。キミは、ゆっくり休んでいていいから。キミも大きな仕事だったから、 忙しかったんでしょう?」 紡は、仕方なくリビングのソファーに座って、天が戻って来るのを大人しく待つことにした。 (ちょっと……いくら何でも、騒ぎすぎでしたね。天くん、きっと呆れてしまったのかも……。) 紡はしょんぼりと自己嫌悪に陥りつつ、先程まで立ち上げていたノートパソコンの電源を落とした。 「お待たせしました!」 天の声が、鮮やかに耳に飛び込んで来た。 「天くん……!!それ……!?」 紡の驚いた表情に、満足げに微笑む。お盆に乗せられた黄昏色のグラデーションのクリームソーダと、 もう1つは、宝石のようなフルーツがふんだんに使われたフルーツティーソーダ。 「いつの間に、そんな材料を……!?」 紡は魔法使いでも現れたのではないかと――。 「ふふっ、驚いた?」 天は、ソファーの前のテーブルに、お盆を下ろした。 「ソーダ水のCM、楽屋で見たよ。すっごくよかった。」 天はにっこり笑って、紡の頭を撫でる。 「……ありがとうございます……!」 「キミが頑張っているのを知っているから、御褒美だよ。」 天はちゅっと紡のおでこにキスを落とす。 「キミが頑張っているから、ボクも頑張れるし。仕事として、キミがIDOliSH7のマネージャーとして 頑張っているのは知っているけれど、今は、ボクだけに夢中になってほしいな、って。」 (そう……これは、ボクのちょっとした独占欲、だよ。) サファイアブルーからアメジスト、淡いピンクダイヤモンドへと美しいグラデーションを作るソーダ 水は、まるで、夜へと誘(いざな)うように、透き通る宝石のような輝きを放つ。ソーダの弾ける泡は、 まるで生まれては消えゆく星のように美しい。そして、フルーツをふんだんに使ったフルーツティー ソーダは、夕暮れの琥珀色の海を漂う宝石のように美しい。 「こ……こんな……。」 紡は真っ赤になって、顔を手で覆った。 「こ……こんな……こんなおもてなしされてしまったら……天くんの虜にならないわけ、ないじゃない ですか……!」 「ふふっ、それは御名答。」 天は本当に嬉しそうに、ふわりと笑った。 「ね、どっち飲む???」 「……どっちなんて、選べないです……!」 「じゃ、半分ずつにしようか。」 「はい……!」 紡は満面の笑みを浮かべて、頷いた。
互いを労う気持ちが溶け合って、優しい時間が流れていった。 |
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夏🌻🌊🍉🎆アイテムで、何かお話が書きたくて出来上がったもの。 ゆるっとしたお話ですが、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。 当然かのように、天紡は同棲しています。何気ない日常のワンシーンを描いていきたいですね。 (2022年7月28日完成、2023年10月27日サイト公開) |