歩む未来を指し示そう――。

 部屋の電気は消されているけれど、ベッドサイドの灯りだけが、横たわる二人の世界を優しく
照らし出す。
 天はそっとじゃれるように紡の柔らかい髪に口付けると、ぎゅっと抱き締めた。
「天くん……。」
 紡もそっと名前を呼んで、天の胸にそっと頬を寄せた。天も紡に応えるように紡を抱き寄せ、そっと
頬に口付ける。
「ん――……。」
 愛しい人に抱き締められているだけでも、幸せだというのに、口付けされると、自然に甘い吐息が
零れる。
「……今夜は、紡ちゃんを抱き締めて眠るだけにしよう……って思っているのに。」
 熱い吐息が零れた紅い唇を、天は自分の唇を重ねて奪う。
「や……天くん……。」
 啄むように、唇を重ねて来る天に、紡は腕の中で喘ぐことしか出来ない。
「ねぇ……この前、見ていた特集――」
 天は思い出したかのように、先日ばったり出会った時のことを語り始める。
 大きな硝子のような瞳に、天の姿が映し出される。真っ直ぐに見つめる瞳に、話を聞いてほしいの
だろうと思い、紡は静かに耳を傾ける。
「あの日の撮影の時……キミが隣にいてくれたら、もっとよかったのに……って。」
「天さん……。」
 天はふっと優しく微笑むと、愛しそうに紡の頬に触れる。
「以前のボクなら……仕事は仕事、って思うのかもしれないけれど。」
 紡はそっと天の手に自分の手を重ねる。
「でも……キミと出会って、こんなボクも悪くない、って許せるようになった。」
「はい。」
 懺悔のような言葉を吐く天に、紡は笑顔で応える。
「ボクを変えたのは、紛れもなくキミだよ。」
 愛しそうに紡を見つめながら、天は再び紡の唇にキスを落とす。
「恐縮です。でも……ちょっと嬉しいです……!」
 天は紡の柔らかい胸元に顔を埋めた。
「キミがボクを変えたのなら……もし……キミとウェディングベルと鳴らす時は……キミの生きて来た
 過去の彩りに添えて、これから生きていく未来へと新しい色を染め上げていかないとね。」

 紡は天の柔らかい髪を撫でながら、そして、天の頭をかき抱いて呟いた。
「天くんと私の幸せの色……どんな色になるのでしょうか……?」
「きっと、最高の色になるんじゃない?」
 天は再び、ちゅっと紡の唇を奪いながらと、紡の指を自分の指に絡めた。
夜がこれから深まるように、二人の愛蜜なる炎は、まだ体に灯ったばかりだった。

 キミがボクを変えてくれたように、透き通るほど美しいキミの心と体をボクの色に染め上げて、
そして、混ざり合って、幸せの色で未来を描いていく。きっとそれは、運命なんかじゃない――過去に
キミと重ねた時間が、他の誰でもない、キミとの時間がなければ、混ざり合うことなんて叶わなかった。
 すべての事象は変わっていくもの。だから、これからも共に、更なる変化を楽しんで時を重ねて
いこう――。
 きっと、キミとなら――。


前作「薬指に魔法を掛けて」の後編っぽい作品になりました。
はー、ラブラブ💕な2人を書くのは楽しい😊😊😊天紡💗💍✨💐🌷 ちゃん、早く結婚して🥰🥰🥰
やっとサイトにも更新出来たので、また新作も書いていきたいですね。
(2020年6月28日完成、2021年3月21日更新)