今年の春は、番組の企画でIDOLiSH7、TRIGGER、Re:valeという御馴染みの面子で、吉野山に
来ていた。
 吉野と言えば、世界遺産にも登録されており、昔から日本有数の桜の名所である。
そして、何より、吉野の桜が日本一と持て囃されるのは、各所の桜は蕾が綻び始めると、一気に
満開となり、一瞬にして散ってしまう。春先は、三寒四温で菜種梅雨(なたねづゆ)とも呼ばれるほど、
雨が多い。季節の変わり目は、雨と共にやって来て、せっかく咲いた桜の花を、無残にも散らして
しまう。
 しかしながら、吉野の桜は、山全体が桜の花で覆われており、一目千本と呼ばれ、四月上旬から
下千本、中千本、上千本、奥千本と麓から山の頂にかけて、約一ヶ月弱、見事な花霞に覆われる。
他の場所では見ることが出来ない絶景が、神々の宿る山として、昔から人々には畏怖されて、信仰の
対象ともなって来た。
 桜が儚い――なんてことはない。むしろ、春になれば一気に山々を染め上げ、まるで白い炎のように
木々が息を吹き返すのだから、古代の人々の桜信仰というのは、頷けるものがあるだろう。
 ちょうど、桜の花は下千本が散り始め、桜の花吹雪が春風に乗って舞い踊る中、そして、中千本が
これからまだまだ見頃の時期……花見としては絶好の時期に、彼らは吉野にやって来た。
 ロケをするのは、なるべく人のいない午前中をメインに、吉野の食べ物を紹介する食レポや、歴史的に
見所も多く、点在している宿坊や神社などを紹介する、まさに旅行番組である。
「あー!あそこのおにぎり、とってもおいしそう!桜のおにぎりだって!一織、一緒に食べようよ!」
「ちょっと、七瀬さん!騒がないで下さい!カメラ回っているんですよ!」
 いつものことながら、タイムテーブルなどはあってないようなもので、グダグダに進行はするものの、
逆にそれが視聴者やファンに受けているので、スタッフもニコニコしながら、和やかに収録は進んで
いった。
 周りの観光客も、平日ということもあり、年配の花見客が多く、アイドルとして認知は多少なりとも
されてはいるものの、まるで孫を見守る温かい目で、彼らの撮影を見守ってくれていた。
「いいねぇ、若いって。お兄さん、早く収録終わらせて、宿で花見酒といきたいんだけどねぇ。」
「――つーか、おっさんは山登りが何気にきついから、そんなこと言ってんだろ!?」
「よく分かったな、ミツ。」
「でもさ、こんな綺麗な景色、そう見られるもんじゃないぜ!ほらほら、花を追い駆けて登れば、
 全然きつくないって……!」

 ちんたら歩く大和の背中を、小柄な三月がぐいっと押した。
「そうですよ、ヤマート!こんな美しい景色、ノースメイアでは見られませんでした!この国の美しい
 絶景、私の麗しい瞳に、焼き付けておきましょう!」

 相変らずのテンションの高いナギに、大和もハイハイと相槌を打って、歩を進めた。
「……そーちゃん……この桜、オレたちの歌に出て来た『恋のかけら』みたいじゃね?」
 環が満開の花に向かって、大きく腕を広げて、手を伸ばした。
「ふふっ、そうだね、環くん。たくさんの『恋のかけら』みたいだね。」
 壮五も環に感化されたのか、一緒に手を伸ばした。そして、二人でふふっと微笑んだ。
「この花みたいに、僕たちのファンにも、笑顔になってもらいたいよね。」
「そーちゃん、たまにいいこと言う……!」
「……環くん、たまに、は余計だよ。」
 MEZZO'の二人は肩を並べて、他のメンバーの後を追った。
 この頃……マネージャーである紡は、万理と共に、他の事務所のマネージャと共に、訪れる場所の確認
や準備などが整っているのかどうかなど、細かな裏方の仕事をこなして走り回っていた。表で彼らが自由
奔放に演じていられるのも、縁の下の力持ちである彼らの働きぶりがあってこそ……なのである。
 正直、彼女たちは花見気分……どころではなく、常に時間との闘いをしていたのだった。

*******

 他のメンバーであるTRIGGER、RE:valeもそれぞれ収録を終え、日中のスケジュールをこなした後、
メンバーは貸し切ってある宿にひとまず全員戻り、大広間に一旦集まった。
 ざっくりと、今後のスケジュールの確認と部屋割りである。RE:vale、TRIGGERの先輩グループは
もちろん一人一部屋用意されていたが、IDOLiSH7は大所帯のため、ざっくりとユニットごと
分けられることになった。
 夜には、成人した大人組のみで、夜桜の撮影がある。未成年組は、もちろん宿でお留守番である。
「えー、お兄さん、せっかくの花見なのに、男と相部屋なの?マネージャーと一緒がよかったな~。」
「アホか、おっさん!マネージャー、ドン退いてるだろ!」
 キレのいい三月のツッコミがすかさず入り、紡を気遣った。
「ごめんな、マネージャー。リーダーのことは、俺が後で、きっちりシメておくから!」
「あはは……さすがに、私も生物学上女ですので、御一緒するわけにはいきませんから……!」
 返答に困っている彼女の後ろから、いきなり肩を抱かれ、紡の視界は一瞬ぐらりと揺らいだ。
「二階堂、お前、紡に手を出すんじゃねぇぞ?」
「紡ちゃんはIDOLiSH7のマネージャーなんですけど?紡ちゃん、手離してもらえます~?」
 バチッと火花が飛んだところで、龍之介が間に入った。
「ほらほら、二人とも!せっかくこんな素敵な場所に来たんだから、みんなで一緒に楽しもう!」
 さすがにTRIGGER切っての人徳の人、である。彼のほっこりとした笑顔を見せられると、誰も文句は
言えなくなる。
 そんな大人たちの茶番を尻目に、天はさっと紡に近付くと、手にメモを握らせた。咄嗟に手渡された
紡は驚いて、メモを落としそうになったが、ぎゅっと握り締めた。
 そして、そっと一瞬近付いて囁いた――。

――今夜共に、夜桜を見よう――。

……と。

*******

 紡は宿の自室に戻ると、天から受け取ったメモを確認した。
「二十三時……キミの部屋に行く……。」
 細い指先で、そっと彼の筆跡をなぞって呟いた。
(逢いに……来てくれるのですね……。)
 二十二時には夜桜の撮影も終わって、みんなが宿に戻って来る。夜の撮影は万理や他のマネージャーが
気遣って、紡には部屋で休むようにと促した。その気持ちを踏み台にしてしまっているような気がして
申し訳ない気持ちと、彼に逢いたいという気持ちとが入り混じっていた。
(でも――やっぱり逢いたい――。)
 紡は気持ちを落ち着けようと、障子をそっと開き、そのガラス戸の向こうに広がる夜桜を眺めた。
 夜でも白く浮き上がる桜の花が、幻想的な花行燈のように、光を孕む。彼らの泊まっている宿からは、
下千本が一望出来る、絶景の宿だ。また、宿の傍にも、枝垂桜が植わっており、すぐ傍でも桜の花を
楽しむことが出来る。
(さて……九条さんが来る前に、いろいろ済ませてしまいましょうか。)

*******

 二十三時より少し早く、彼は訪れた。紡の待ち人・天である。
 外の通路に誰もいないことを見計らって、訪ねて来たのだった。紡はすぐに、天を中に招き入れると、
内側から鍵を掛けた。
「やっとキミに逢えたね。」
 天はふわりと微笑んだ。アイドルとしての笑顔ではない、彼の素顔――。
「ここからの桜、とっても綺麗なんですよ。」
「へぇ……本当だね。一望出来るとは聞いていたけれど、部屋によって、やっぱり見え方が違うから、
 新鮮だね。」

 彼はそっと障子を閉めると、紡の肩を抱き締めた。宿で用意された浴衣越しに、互いの体温を感じた。
「でも……紡さん、今はボクだけを見ていて――。」
「一緒に桜を見よう、って言ったのに。」
 紡はくすりと笑った。
「キミの心が花にばかり奪われるのなら、ボクは桜にだって嫉妬する……。」
 天はそっと紡の額に口付けを落とした。紡のふわりとした柔らかい髪が、天の鼻をくすぐった。密かに
香るシャンプーの香りが、天の欲情を煽る。
「キミって本当にずるい子……。」
 そう呟くと、天は紡を抱き上げて、宿の使用人が敷いてくれた布団の上に下ろした。
 そのまま、天は彼女の背後に座ると、耳に息を吹き掛けた。
「――……ひゃん……!」
「紡ちゃん、耳、弱いよね。」
 そして、執拗にペロペロと舌を使って、耳を舐め、耳の穴にも舌を差し入れした。
「――……あぁぁぁぁんっ……!」
 耳から首筋への愛撫をしながら、片方の手は浴衣の襟から手を入れられ、白く柔らかい乳房をやわやわ
と揉み始めた。そして、もう片方の手も、同じように、紡の柔らかい乳房を鷲掴みにして、だんだん強く
揉み始め、乳房の上の小さな桜色の突起を、指で摘んだ。
「下着を着けてなかったなんて、そんなにボクとのエッチ、期待してた……?」
「や……そんな……意地悪言わないで下さい……!」
 紡は必死の抵抗をするも、天に触れられ、揉みしだかれる乳房の快感が、体を駆け巡り、その喘ぎが
更に天をますます煽っていく。
 そして、そっと後ろから浴衣の裾を肌蹴させ、彼女の太腿を露わにすると、そっと太腿と臀部を何度も
撫で回した。その間も、紡の背後では、天自身が大きく堅くなっているのを背後に感じて、紡もまた、
彼に欲情していた。
「て……天くん……っ!」
 下のショーツは着けていたとはいえ、もう今では、愛液でぐっしょり濡れて、だらしなく太腿を伝って
流れ落ちていく。密壺からは止め処なく愛液が零れ落ちて、早くほしいと天を誘う。天はショーツの上
から、紡の花の割れ目をすっとなぞり、更にくるくると布の上から指を滑らせる。空いている手は
やわやわと腰から腹部を撫で、紡を焦らすかのように、細い天の指が這い回る。
(……もう……限界……!)
 紡はきつく目を閉じて、体を震わせ、天の愛撫を拒もうとする。
「駄目だよ……キミが乱れたところ、もっと見せて。」
 天は一旦手を止めると、そのまま紡を褥へと押し倒した。そして、そのまま、紡へと覆い被さると、
首筋に噛み付くようなキスを落とした。まるで、自分のものだと主張するかのように、紡の白磁の肌に
刻印を残す。

 こんなに激しく彼女を求めるのは、きっとこの桜のせい――。

 まるで――かの有名な作品にも出て来る、桜の森の満開の下で、生首を並べて遊び狂う鬼女のように、
天は何かに取り憑かれたかのように、紡の体を貪った。肌蹴た浴衣から飛び出した白い乳房に顔を埋め、
隈なく舌で愛撫し、指で焦らした。紡もいつも以上に喘ぎ声を上げて、天を求めて、腕を伸ばした。
「……天くん……天くん……っ!」
「……紡……ちゃん……!」
 天は紡のショーツに手を掛けて、一気に引き摺り下ろすと、人差し指と中指を密壺に埋めた。
「――っ……!あああんっ!」
 天の指が体の一部に挿入された喜びに、紡はそれだけで、更に歓喜の愛液と滴らせた。
「……キミのここ、トロトロ……。」
 ちゅっと、唇にキスを落として、言葉を続ける。天は指を抜き差ししながら、更に、紡の密壺を掻き
混ぜたり、差し入れを繰り返した。
「言わないでっ……!」
「――どうして……?もっと、気持ちよくしてあげる。」
 天は紡の秘花にキスを落とすと、先程まで差し入れしていた指を密壺の中でくいっと折り曲げて、
密壺の中を刺激する。
「……やぁぁぁぁんっ……!」
 特に紡の啼き声が大きかったところを中心に、天は更に刺激を加え、断続的に刺激した。
「やだ……やだ……漏れちゃう……!」
「……いいよ……イッて……!」
 ぴゅっと紡の密壺から、更なる密が勢いよく噴き出した。
「……ごめんなさい……。」
 薄く桃色に染まった肢体が艶やかで、恥らう姿さえ、扇情的な表情を見ると、こんな淫らな紡の姿を
知っているのは、自分なのだけかと思うと、たまらない優越感と愛しさで、胸がさんざめく。
 天の手を濡らしたことを謝ったが、天はそのまま、紡の秘花に顔を近付け、唇で花弁を弄り始めた。
 溢れ出した蜜を拭うように、そして、塗り込めるように、丁寧に舌先で紡の花弁を愛撫した。
そして、花弁の中に隠れた秘芽を、ちゅっと吸い上げ、口に含み、舌先で転がした。
 いつもに増して、乱れる彼女を目の前にして、天もさすがに限界が来ていた。
「もう、ボクも挿れるね。可愛いキミのこと見てたら、さすがに限界。」
 天は自身の熱杭を下着から露わにさせると、紡の密壺に宛がった。一気に挿入してしまいたいけれど、
そんなことをしたら、彼女が快楽の海で溺れてしまうかもしれない。宛がうだけでも、するりと入って
しまいそうなくらいに、愛液で溢れていた。
 ゆっくりと挿入をして、紡の細い淫路を進む。
「はぁ……はぁ……っ……!」
 紡が大きく肩で息をしながら、天を受け入れる。華奢な紡は、いくら天が他の男性よりも華奢だった
とはいえ、やはり体にそれなりの負担は掛かる。それは天も十分に分かっていた。
(それでもボクは……彼女を抱かずにはいられない――。)
 奥まで挿入すると、天は紡の頬に、唇にキスを落とした。
「……天くん……大好き。」
「……ボクも……っ!」
 天は紡の言葉に端を発したかのように、腰を動かし始め、肉棒を抜き差し始める。徐々に腰の動きが
速くなり、ぐちょぐちょとした水の音が、聴覚をも犯し始める。
「はぁっ……キミのエッチな音っ……聞こえてるっ……?」
 天は更に、熱杭で紡の密壺を掻き混ぜ、わざと音を聞かせるかのように、激しく腰を突き動かした。
ガツガツと理性を忘れて、腰を動かし、紡の喘ぎ声聞いて、快楽を貪った。
「……ひゃぁあぁぁあんっ……天くんっ……!……気持ちいいっ……のっ……!」
 情欲に溺れた紡の密壺が、ぎゅっと天の肉棒を締め上げた。
「はぁっ……イくっ……!」
 途切れそうになる意識の中、天は白濁の飛沫を、紡のお腹に吐き出した。
 二人は大きく肩で息をしながら、しばし呆然としていたが、後始末をすると、天は力尽きて、紡に覆い
被さり、抱き締めた。紡もそれに応えるかのように、背中に手を回し、ぎゅっと抱き締めた。

 Bodyという言葉には、生きた生身の体そのものの意味と、それ単体で死体をも意味する。
まるでボクたちはその死体を貪って美しい花を咲かせる桜のようだ。お互いの立場を忘れ、情欲に溺れる
ということは、とても背徳的であるけれども……ただ、そこにはアイドルでもなく、マネージャーでも
なく、ただ一人の男女がお互いを想い、純粋に恋に落ちるということ、そして、彼女とこうして体を
重ねることは、ボクにとってかけがえのないカタルシスだ。

――そう――それはまるで、死体が埋まっている土から、真っ白な桜の花を咲かせ、神々しさを讃える
かのように――。


久しぶりの更新になりました。今回、軽率に吉野山に行ってもらったんですけど、リバレ先輩🍑🍐
登場させるつもりが、出来なかったのが残念ですね😢
🌸の話は、同人誌にも収録している「片恋ひとひら」に続き2つ目なんですけど、やっぱり妖艶な
🌸の話は書いておきたかったので、仕上がった作品です。
(2019年4月4日完成)