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「天、今回は一人で遠方に向かわせることになって、ごめんなさいね。」 「気にしないで、姉鷺さん。ボクは一人でも平気。それに、ロケと言っても、 二、三日でしょう?楽や龍 の仕事、優先して。」 天はロケの前日、事務所に立ち寄り、マネージャーである姉鷺と、仕事のスケジュールの最終確認を 行っていた。今回のロケは、よくあるサスペンスドラマの収録で、天はそのゲスト出演として、物語の キーマンとして出演することになっていた。主演ではないので、待ち時間が長いのは覚悟の上だったが、 仕事で立ち回ることが多い天にとって、ハードな仕事が立て続いていたため、ちょっとした息抜きが 出来る仕事は、とてもありがたかった。 「天、気を付けて行って来るのよ。」 「心配しすぎ。」 天はクスリと微笑んだ。 「景色も綺麗な場所だって聞いているから、いつものスタジオの仕事と違って、気分転換になるだろう し、ちょっとした小旅行をするつもりで、楽しんで来るよ。もちろん、仕事は完璧にこなすけれど。」 ******* ロケは思っていたよりも時間が掛かっていた。待ち時間も長かった天は、現場に到着してからも、仮眠を取りつつ、自分の出番で万全のコンディションで演技に臨めるように、シナリオをチェックしたり、 頭の中でシュミレーションをしてみたりと、本番に備えていた。 天の特に重要なシーンは、夕陽が傾く中、緑に囲まれた棚田と、その畦道に帯となって咲き乱れる曼珠 沙華を背景に、主演俳優にキーマンとして、重要な告白をするシーン。物語のクライマックスで登場する 天は、ずっとそれまで現場で演技をしていた人間とは違う。いきなりそのシーンに飛び込むわけだから、 それなりのテンションの高さを作っておかなければならない。 天は、カメラの回る現場へと、足を踏み入れた。 夕暮れ時、とても重要なシーンを、一発で取らなければならない。日が落ちるまで、そこまで時間が あるわけではない。天は撮影に臨んだ。凛とした気迫を漂わせて――。
「いやあ……九条くん、君の演技、本当によかったよ!最高の絵を取ることが出来た!」 ******* 遠方でのドラマのロケが終わってから、天は多忙な日々を過ごしていた。TRIGGERのメンバーは人気アイドルということで、グループとしても、単独の仕事も多かったわけ だが、ロケから戻って来てからの天は、姉鷺に今まで以上に、仕事を入れるように要求していた。 まるで、何かに憑かれたかのように……。 「天……あの子、大丈夫かしら……?今まで以上に、仕事しすぎているのよ。」 姉鷺は、事務所にいた楽と龍之介に、ぽつりと漏らした。 「ああ?あいつが働きすぎなのは、いつものことじゃねぇのか?」 楽はぶっきら棒に、姉鷺に答えた。逆に、龍之介は、嬉しそうに、にこにこしながら、言葉を続けた。 「もしかしたら、天、ロケに行って、何かいい刺激を受けたのかもね!」 「そうだったらいいのだけれど……。」 姉鷺はふっとスマホに目をやった。 (そうだわ……!もしかしたら……) すっと指でスマホのロック画面をスライドすると、ラビチャを開いた。一文字一文字、願いを込めて 打つかのように……。
紡は事務所で必要な備品を買い出しするために、万理と共にショッピングモールに来ていた。 ******* 「――ねぇ……どうして、今夜、キミがここにいるわけ……?」玄関の扉を開けた天は、ぐったりと疲れた表情で、紡を迎えた。 紡は、仕事を定時で即上がりし、天の住むマンションへと押し掛けた。 いつもに増して、なぜか御機嫌斜めな天がいる。まるで、付き合っている恋人に向けるとは思えない ような、冷めた声。いつもならば、普段クールな天も、紡の前だけでは、穏やかな笑顔を見せてくれると いうのに……。 「久々に……お会いしたい、っていう気持ちでは、ここに来てはいけませんか……!?」 「――まぁ……いいよ。とりあえず、中に入って。」 紡は、姉鷺からもらったラビチャを見て、ここに押し掛けた。姉鷺は二人が付き合っていることは 知らないはずだけれど、年齢も同じということ、そして、二人がラビチャで連絡を取り合っていることは 知っていたため、それとなく、天の様子を見守っていてほしい旨を、紡に伝えたのだった。 「紡さん……全く……キミ、どうしてそんなに唐突なの……?」 リビングのソファーに腰を掛けながら、天は呆れた、という表情を見せた。 「ロケから戻られてから、すごく仕事が多忙とは伺っていました。」 「そうだね。いろいろと、今まで以上に、仕事に打ち込んでいたよ。」 天は紡から視線を逸らして、話をする。いつもならば、すぐに紡に甘えるというのに。 「――キミを……思い出さないように……。」 「――え……?」 紡の大きな瞳が揺れた。そんな言葉を、天の口から、聞く日が来るとは、思っていなかったからだ。 「どうして……そんなこと……」 言葉を口にする前に、紡の瞳から、大粒の雫が零れ落ちた。きゅっと唇を噛んで、涙をこらえようと しても、頬を伝う涙は止まらない。 静かな部屋に、紡のすすり泣く声が響いた。 「――ごめん……言い方が悪かった。八つ当たりなんて、みっともないよね……。今、キミと会って しまったら――きっと、乱暴にキミを抱いてしまうと思ったから――。」 天はくっと口を固く結んで、視線を逸らした。整った顔を歪ませ、苦渋を滲ませたその表情に、紡は ハッと目を見開いた。 「――天さん……?何かあったのですか……?」 紡は恐る恐る、天の頬に手を差し伸ばした。怒りとも悲しみとも取れるその表情を見て……紡は一言、 天の気持ちに寄り添いたくて、言の葉を紡いだ。 「天さんの痛みと悲しみ、私にも分けて下さい。」 紡はそっと天の手を握ると、その甲に口付けを落とした。そして、労わるように、天の額に、そして 瞳に、頬にキスを降らせた。いつも、天が紡にそうするように……。そして、項から鎖骨へと、紡が唇を 這わせた時だった。 「駄目だよ、姫君。ここから先は、ボクの役目。」 そして、ぐいっと顎を掴むと、天は噛み付くように、紡の口腔を犯した。普段よりも、少し乱暴で、 味わい尽くすかのように、濃厚に舌を絡ませた。 「――んっ……!」 息が苦しくなって、紡は、一旦天の舌から逃れた。天はもう一度、今度はそっと紡の頬に口付けると、 肩に顔を埋めて、ぽつぽつと話始めた。 「……この前のロケ……泊り掛けで行って来たのだけれど……。」 「はい……景色が綺麗な場所だとも伺っていましたけど。」 紡は記憶を掘り起こしながら、天の次の言葉を待った。 「監督に誘われたんだ……。乱交パーティーに……。」 「えっ……!?」 さすがの紡も、絶句である。芸能界、闇が深いとは噂には聞いていたものの、自分の周りを取り巻く 人たちが、そういったものに参加したという話は、微塵も聞いたことがなかったため、都市伝説的なもの だとばかり思っていた。 「歌や演劇、芸能という芸術を極めるべき場所で、己の権力を武器にして、才能ある芽を摘むなんて、 反吐が出る。そして、何よりもそんな接待で、ボクを思いのままに操ろうとして来るのが許せなかった し、そういう人物だと見抜けなかったボクも、浅はかだった。知名度があるとはいえ、そんな監督の 作品に出てしまうのは、正直不本意だけれど、ここでボクが辞退してしまえば、多くの人に迷惑が 掛かってしまう。」 「……だから……そんなに苦しそうに、なさっていたのですね……。」 紡は、まるで自分のことのように、悲しそうな顔をして、俯いてしまった。 「将来的に、アイドルだけではやっていけないから、演技の一環として、女を抱く練習はしておいた方が いい、と――。」 天がいかに、普段からストイックに仕事に向き合っているかを知っている紡としては、その言い方は 許せなかった。そして、正直、そんな夜の事情に赤の他人に口出しされるなど、余計なお世話でしか ない。 「じゃあ、私が天さんを守ります……!」 「駄目だよ、紡。あの監督に目を付けられたら、今度は紡が餌食になってしまう。」 「どうしてですか……?」 天の言葉に、紡はきょとんとした。 「あぁっ!もう、キミのそういうところ……!」 「えぇっ!?」 天は紡を抱きかかえると、寝室に連行した。 「もう、今日も手加減なんて、してやらない。」 紡を押し倒し、覆っていた服を一気に剥ぎ取り、一糸纏わぬ姿にしてしまうと、天は首筋に、噛み付く ようなキスをした。何度も何度も、きつく吸い上げ、肌に紅い刻印を残しながら、首筋、背中と、連なる ように、紡の真っ白な肌に、華を咲かせた。まるで、先日のロケで見掛けた、あの棚田の畦道に咲く曼珠 沙華のように、紅蓮の炎を肌に刻んだ。 「あぁんっ……天くん……!」 天の肌が、唇が、紡に触れるたびに、甘い吐息が零れ落ちる。夢中になって、紡の肌を貪る。 一通り、体のあちこちに刻印を残した天は、満足したのか、今度は、紡の胸の飾りを嬲り始めた。 乳房を揉みしだき、指で摘んだり、さすったりした後、口に含んで舌先で舐め回した。 「気持ちよかったみたいだね。」 つんとピンク色に立ち上がった乳首を見て、天は満足そうに微笑んだ。 「そんなに見つめないで……。」 天はそんな紡のお願いごとなんて、聞く耳を持たず、乳房に唇を這わせ、肌を吸い上げると、真っ赤な 刻印の花を咲かせた。天が花を咲かせる度に、甘い毒で痺れていく。 「駄目だよ。今夜は、キミを抱き潰す、って決めたんだから。」 そして、天自身もすべての服を脱ぎ、紡の隣に横になると、そのまま、紡を自分の体の上に抱いた。 熱くなった肌が密着して、体が更に疼いた。天の硬くなった肉棒が当たり、紡の割れ目と擦れて、何も していないのに、じんじんと熱を持っていた。 「ひやあああんっ、入っちゃう。あああんっ……!」 「ちょっと触れただけなのに。そんな可愛い声出されたら、ボクももっと苛めたくなるんだけど。」 紡が猫のような声を上げると、天がクスリと悪戯っぽい笑みを零す。 「紡ちゃん、お尻、こっちに向けて。」 「え……?」 「もっと、気持ちよくしてあげる。」 紡を自分の顔の上に四つん這いにさせると、紡のお尻を掴み、腰を下ろさせ、ペロペロと紡の肉襞を 舐め始めた。 「あああんっ……!天くんっ……!」 急な刺激に、密壺から大量に、花の蜜が溢れ出す。天は密壺を唇で塞ぎ、舌で抜き差しして、刺激を 更に与えると、紡の腰は更に揺れて、天を快楽へと誘(いざな)う。 「ねぇ……紡ちゃんっ……ボクのも、よかったら、舐めて。キミの口で感じたい。」 紡は、目の前にそそり立つ、天の肉棒にそっと手を添えると、そっと上下に扱き始めた。徐々に力を 入れて扱きながら、硬くなった肉棒の先端に、ちゅっと口付けた。 「はっ……気持ちいい……。」 天の声を聞いて、我慢汁が滲む肉棒を、紡の小さな口に含んだ。硬く大きく膨れ上がり、口の中に 入れるのがやっとの状態だったが、少しずつ舌を使い、快楽を与える。 「ん……っ……!」 「……もう、いいよ……。ありがとう。」 天は紡の口から、自身を吐き出させて言った。 「やっぱり最後は、キミの中でイきたい。」 「天くん……私も……。」 紡を仰向けにさせると、天は紡を抱き締めた。そして、濡れそぼつ紡の花壺に自身の熱杭を宛がうと、 一気に挿入した。淫路を蛇が進むかのように、紡の体の中で、淫乱な蛇が暴れ出す。 ギュっギュっと、天の肉棒を、紡の淫唇が貪り、締め上げる。 「あああんっ……天くん……大好き……!」 「……ちょっと、毎回、煽りすぎ……!」 天は寸前で、体の中から肉棒を取り出すと、紡のお腹の上に、白い飛沫を吐き出したのだった。 ******* 翌朝――。いつものようにスーツを着て、髪を緩く横で束ねた姿で出勤した紡は、陸から盛大なツッコミを受ける ことになる。 「あーっ!マネージャー、首の後ろのところ、たくさん虫刺されしてる!」 予想もしなかった陸からの突っ込みに、周りにいたアイドリッシュセブンのメンバーも、ぎょっと 白目をむくことになる。あまり深く突っ込まないように、リーダーの大和と三月が別の話題で、陸の 興味を引いたものの、察しのいい一織は悶々とあれこれ想像することとなり、アイドリッシュセブンの メンバーへの影響は、予想以上に大きかったとか、大きくなかったとか……? |
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今日は「天紡💗💍✨💐🌷の日」ですね🥰🥰🥰本当はイラストも上げたかったけれど、さすがに 無理そうでしたので、とりあえず小説をアップしました。また人を選ぶ性癖のものを書いてしまった💦 何でも許せる方向けです。個人的には、情景描写やら、いろんなものを作品の中にリンクさせることが 出来て、満足してはいます。彼岸花ほど、「天上の花」と言われたり、「死人の花」と言われたり、 イメージが真逆の花なのは珍しいと思います。相思華は、花が咲く頃は葉っぱが見られないけれど、、 葉っぱが見られる頃には花が散ってしまっていて、「花は葉を思い、葉は花を思う。」という同時に 見られることが出来ない、ということから、名前が付いたそうです。 (2018年9月26日完成) |