お盆を前に、あちこちで夏祭りや納涼の催しで、全国各地が盛り上がる頃。
都内でも、毎年、大きな花火大会がいくつか催される。特に、とある文豪が情緒豊かに描いた花火
大会は、今も昔も、庶民に親しまれてきた夏の風物詩なのだろう。時を越えて、長く廃れることなく
続いてきた伝統というものは、今も昔も、人の心を捉えて離さないものがあるのだろう。
 さて……誰が言い出したのかは定かではなかったが、仕事ではなくオフで、夏祭りや花火大会を
楽しみたい、という声を、IDOLiSH7の面々から、マネージャーである小鳥遊紡は聞いていた。いくら
アイドルとはいえ、夏祭りを楽しみたい、という気持ちはよく分かる。
 ただ、有名になりすぎてしまった彼らを、オフとはいえ、人混みの中に放ってしまっては、混乱が
起きて、事故にもなりかねない。
(どこか、貸切でお店とか取れるといいんでしょうけど。万理さんにも、相談してみましょうか……。)
 紡は、ラビチャを開くと用件を打ち込み始めた。忙しい彼らに少しでも労いの気持ちを込めて、何か
出来ないかと……相談を持ち掛けたのだった。

*******

「はいはーい!モモちゃんでーす!」
「こんなに面白いこと、首を突っ込まないわけ、いかないからね。」
 花火大会の当日……万理がセッテイングしてくれたというホテルの屋上のラウンジで、出迎えてくれた
のは、ここにいるはずがないRe:valeの二人だった。しかも、ちゃっかり浴衣を着ている。
 IDOLiSH7のメンバー以外に、しかも、Re:valeとTRIGGERという二組の先輩も揃っている
という、傍から見たら超豪華メンバーだ。しかも、全員めったにお目にかかることが出来ない浴衣姿だ。
「万理さん、これ、どういうことなんですか!?」
「そりゃ……紡ちゃん、驚くよね……。実はね――。」
 小鳥遊事務所のもう1人の中心的マネージャー・大神万理は、事の成り行きを説明した。紡から相談を
受けた折に、万理も唐突には絶好の場所が思い浮かばず、偶然、百から来たラビチャのついでにそういう
貸切出来そうな場所がないか、聞いてみた。お祭り好きな百が、このネタに飛び付かないわけがなく、
「千と一緒に絶好の場所を抑えるから、任せて!」と即座に返事が来たのだ。
そうなれば……夫婦漫才で息がぴったりな二人のことである。どうせなら、TRIGGERも呼ぼうという話に
なったのだろう。
 ちゃっかりと高級ホテルの屋上ラウンジを貸切にしてしまった。
 広い店内は、黒い革張りのソファーがあり、ガラス戸で仕切られた外のテラスにもテーブルと椅子が
いくつか設置されている。花火を見るには、絶好のロケーションである。
「それにしても……マネージャー、浴衣とっても可愛いよね!似合ってるよ!」
 陸が満面の笑みで、褒めちぎる。
 白地に淡い桃色や臙脂で描かれた牡丹や芍薬の花は、紡のイメージにぴったりだった。
「あー、りっくん、ずりぃ!オレがマネージャーのことを一番にほめよう、って思ってたのに!」
「えへへ、ごめんね、環!でも、あんまりに可愛かったから、つい、口から出ちゃった。」
「リクは役得だなぁ!その素直さが、お兄さん眩しい……。」
 IDOLiSH7の面々が、思い思いに紡の浴衣姿の感想を述べていると、大和の後頭部に刺激を感じた。
「痛っ……!ミツ、何すんだよ。」
「オッサン!まだ酒も入ってないのに、しんみりするなよ。花火はこれからだぜ!」
「ん――お兄さん的には、花火もいいけど、それを口実に飲めるのがいいかな。」
「OH!花火を見るには絶好のロケーションで~す!My princess、今夜は忘れられない夜に
 しましょう……!」

 ナギが紡の華奢な手を取って、甲に口付けた。
(ナギさん……!!)
「……ナギ!マネージャー、困ってるだろ!?」
 三月はナギにチョップを食らわせると、ナギと紡の間に割って入った。
「今日は、マネージャーに感謝しないとね。僕たちを労ってくれるつもりだったのでしょう?
 ありがとうございます。今日は、みんなで楽しめるといいね。」

 ふわりと、壮五の穏やかな声が聞こえた。
「あ、でも、そーちゃんは飲み過ぎ禁止な。酔っ払ったら、一番面倒だから。」
「ごめんね、環くん。今日は気を付けるよ。」
「そうですね。今夜ばかりは、四葉さんの意見に同意します。兄さんも、あまり飲みすぎないで
 下さい。」

 一織がさっくりと、年上組に釘を刺す。いい大人たちは、酔っ払うと手と付けられなくなり、いつも
介抱するのは、年下のメンバーだった。
「おい、紡。そろそろ、こっち来いよ。」
 楽が痺れを切らして、紡を呼んだ。
「俺たちのマネージャーなんだけどなー。」
 大和がじとっとした目で楽を見つめた。
「楽さん……それに、TRIGGERの皆さんも、今日はお忙しい中、ありがとうございました!まさか、
 いらっしゃるとは思いませんでしたので、本当にびっくりしました……!」

 紡は深々と3人に頭を下げる。
「紡ちゃん、顔を上げて。仕事が同じスタジオだったんだけど、百さんに誘われて、今日の仕事が
 終わったってことを伝えたら、サプライズしたいから、ってね。」

 龍之介がにっこりと微笑んだ。
「それに、仕事が終わった後、三人で御飯を食べに行く予定くらいだったから、ちょうどよかったよ。
 誘われたきっかけは先輩とは言ってもボクたちの意志でここに来たのだから。」

 天もやんわりと笑みを浮かべた。彼と会うのは、久しぶりだった。互いに仕事が忙しい中、ラビチャで
たまに連絡を取ってはいたものの……事務的な用件でのやりとりが中心で、二人でゆっくりと話をする
時間もなかったのだ。会いたいと思っていても、お互いの身を考えれば、そう簡単に時間の都合がつく
わけもない。互いに会いたいと思う気持ちは募ってはいたけれど、まさか今日、こんな形で、二人が同じ
場所に居合わせることなど、当の本人たちが想定外だった。
 しかも……互いに見慣れない浴衣姿で居合わせるなど……そうあることではない。
 紡は、自分の恋人である天の浴衣姿に呆然と見とれてしまっていた。
 黒に近いシックな葡萄色(えびいろ)が掛かった浴衣は、漆黒の帯で引き締め、天の色の白さを儚げな
艶やかさを引き立てていた。襟元から見える鎖骨が一層、色気を醸し出す。
「紡ちゃん、浴衣、すごく似合ってるね。」
「紡、可愛い。」
「楽、小鳥遊さんをほめるのに、それしか言えないの?」
「いいじゃねぇか!本当のことを、率直に言っただけだぜ!」
「もう、二人とも、こんな日に喧嘩はやめて――」
 ――と、その時だった。

 ドーン!ドーン!

 低く、大きな音が鳴り響いた。
「あ、始まったみたいだね!」
 百がガラス戸を勢いよく開けて、テラスに出た。
「ねぇねぇ、みんなもおいでよ!」
 全員がテラスに出ると、漆黒の夜空に大輪の花々が咲いた。一刻一刻、刹那に色を変える光の花に、
しばらく全員が釘付けになった。
「うわ~!!綺麗~!」
「OH!What a beautiful it is!!花火、とっても美しいでーす!!」
 陸とナギがきらきらと目を輝かせ、大はしゃぎしている。
「そんじゃ……お兄さんは早速お酒飲むな。ミツ、いくぞ。」
「もう行くのかよ!もうちょっと、花火見たいのに!」
「花火なんて、部屋の中からでも見える、って。」
 はしゃいでいる二人を尻目に、大和と三月は室内に戻ってしまった。
「兄さん、何か手伝えることがあるなら、俺も手伝います。」
「じゃあ、買って来たおつまみやらお惣菜、分けてくれよな。」
 大和が部屋に入ったのを皮切りに、ゾロゾロと室内へとメンバーは戻って行った。
 Re:valeの二人と、天、そして紡を残して……。

*******

「今日は、イケメンユキのかっこいい浴衣姿見られて、ウルトラハッピー!」
「モモだってよく似合ってるよ。――ん……?」
「どうかしたの、ユキ?」
 千の視線の先を百が辿る。自分たちのいる場所とは反対の場所にいる、天と紡の姿を認めた。
「へぇ……珍しい組み合わせだね。モモ……どうする?」
「どうする?、ってユキこそ、何考えてるの?」
 先の読めない相方に、百はじとっと千を見つめた。
「こういう時って……鼠花火でも仕掛けてみる?」
「ユキ……!すっごくイケメンだけど、さすがにそれはマネ子ちゃんがびっくりするよ!」
「そう?」
 しれっと過激な発言をした千は、少し考えると。
「じゃあ、デバガメする?」
「ユキ……気になるところだけど、もしかしたら、仕事の大切な打ち合わせしているのかも!?」
「そうね。じゃあ、そろそろ、中に入ろうか。」
「今日は、目いっぱい楽しんじゃお!」
 百はちらりと天と紡の方を見やると、千と共に室内に入った。

*******

 色とりどりの花火が、刻一刻と姿を変えて、夏の夜空を彩る。光の花弁が、ゆるやかに弧を描いては
消えてゆく。眼下には街のイルミネーションが宝石のように散りばめられており、火の粉の煌めきと、
イルミネーションの美しさに、目が眩みそうになる。
「……久しぶり。」
「お久しぶりです、九条さん。」
 紡は改めて、深々とお辞儀をした。
「いいよ、天、って呼んで。」
「はい……。じゃあ……天さん。」
 天が少し照れたように、けれども嬉しそうに微笑んだ。
「紡さん、さっき、ボクのことガン見してたでしょ?」
「む……蒸し返さないで下さいっ……!」
 天に先程のことを突っ込まれ、紡はぼっと顔から火が出そうになった。
「だって……天さんの浴衣姿が、あまりにも素敵だったから……!」
 紡の言葉を聞いて、天もカッと赤くなった。自分だって、全く同じことを思っていたのだから。
 けれども、天は気持ちとは裏腹に、そっと紡の耳に唇を寄せて囁いた。
「駄目だよ、紡さん。――花火の音で、ちゃんと聞こえない。」
 クスリと笑うと、天はふっと紡の耳に口付けた。
「天くん……っ……!」
 天は紡の顎をくいっと引き上げると、そのまま紡の唇を貪るように、口付けた。
「――そんな可愛い姿を見せられて、ボクがどれだけ我慢したと思ってるの?」
 普段だって、十分可愛い自分の恋人が、いつもと違う浴衣姿で、いくらIDOLiSH7の担当と言っても、
自分がいないところで、他の男たちと一緒に楽しんでいたのかもしれないと思うと、少し……いや、
嫉妬するには十分な言い訳だろう。
 天はぎゅっと紡の指を、自分の指に絡ませると、室内からは死角になるテラスの壁に、紡の背中を押し
付けた。そして、絡ませていた指を開放すると、すっと頬に手を寄せた。そして、首筋から鎖骨へと指を
這わせ、浴衣の上から、紡の胸を柔らかく揉んだ。
「天さんっ、もう……これ以上は……駄目っ……!」
 紡はきゅっと目を瞑り、浴衣の襟元を塞いだ。
「何が駄目なの?」
 天はがっと自分の足を、紡の太腿に割り込ませ、紡の浴衣をたくし上げた。
「キミは口は嘘吐きだね。下の口は随分と悲鳴を上げているみたいだけれど……?」
 すっと、紡の下着の上から、下の唇の割れ目をなぞった。濡れてしっとりとした下着の隙間に指を
入れて、直接花芯を弄る。
「ひゃあああんっ!」
 声を出すまいと我慢していたのに、感じやすいところに、直接天の熱を感じて、紡は喘いだ。
 崩れそうになる紡の腰を、天はがっしりと支えながら、紡の密壺に指を直接入れ、肉襞を味わった。
二本の指が、蛇のように蠢いて、密壺を掻き乱す。指が吸い付くように、そして、時にはばらけるように
して、紡の体を味わい尽くそうとする。
 密壺からは、たくさんの密が零れ落ち、紡の赤く火照った太腿を伝い、流れ落ちていく。
 花火に照らされて、ぬらぬらと隠微に煌めく雫を、天は舌で舐め取った。
「いつもと違うから、興奮した……?」
 すっと、天は指を紡の唇をなぞった。そして、ちゅっと軽いキスを落とす。
「天さんとだったら、どんな時だって……ドキドキして、死んじゃいそう……っ!ああああんっ!」
 言葉を言い切るより前に、天は紡の太腿を片方上げ、紡の密壺に押し込まれるかのように、熱杭が挿入
された。
「やぁぁぁんっ!天……さんっ……!」
「もう……キミ、どうして毎回、ボクを煽るのが上手いの?」
 立ったまま、ガツガツと下から突き上げ、紡の体を快感が揺さぶる。天もまた、同じように、いつもと
違うシチュエーションと、紡の密壺にぎゅっと締め付けられる快感に身体も理性も支配される。
「やぁぁぁんっ!天……さんっ……!イっちゃうっ……!」
「――ボクもっ……。」
 すべての熱を吐き出し、二人はぐったりと抱き合ったまま座り込んだ。天はそっと、紡の頭を撫でた。
花火もいつの間にか終わっていて、静寂が訪れていた。ずっとこのまま、二人で寄り添っていたい……。
大好きな人の傍で、こうして、相手の吐息を感じて、鼓動を感じて夜を過ごせたなら、どれだけよかった
だろう。けれども、そういうわけにはいかなかった。

*******

 二人が室内に戻ると……しんと静まり返っていた。
 死屍累々と酔っ払って屍と化した大人組と、はしゃぎ疲れて眠ってしまった年少組で、誰も起きている
者はいなかった。
 それもそのはず――。天と紡の様子をそれとなく悟った百が、大人組を酔い潰し、年少組をゲームで
盛り上げて、寝かし付け、一切外界との交流を絶たせてしまうくらいに、盛り上げ役を買って出た。
相方である千も、それとなく百に便乗して、場を盛り上げていた。
 よって、残りのメンバーが、まさか天と紡が、すぐ外で情事に耽っているなど、つゆ知らず――。

久しぶりの小説更新になりました。
本当は、18禁🔞にするつもりはなかったんですが、やっぱり、H🏩💕しちゃいましたね、2人とも。
外でさせるのではなく、室内でさせてあげたかったんですけど、事の成り行き上、一旦中断して部屋に
雪崩れ込ませるのも、不自然かとも思い、こうなりました。
夏祭りが始まった頃から、書きたいなぁ……って思いつつ、あまりに忙しい日が続いていて、気力が
なかったので、悶々としていましたが、やっぱり、夏🌻🌊🍉🎆が終わるまでには書きたいなぁ……と
思って、何とか形に出来てよかったです。
(2018年8月31日完成)