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七夕の逢瀬は、一年に一度きり。数多くの羽衣伝説が各地で残っているけれど、たった一夜しか共に いられないなんて、我慢なんて出来るわけがない。 現代の天使だなんて言われているボクにだって……たった一度きりの人生、幸せになれる権利がある。 天の河が涙の川だというのならば、その涙の川など乗り越えて、手繰り寄せたい相手がいる。 ボクが彦星なら、織姫を悲しませることなんて、絶対にしないのに――。 ******* 「小鳥遊さん、お疲れ様。」スタジオでのIDOLiSH7の撮影を終えて、紡の背後に、声が掛かった。紡が振り返ると、TRIGGERの センターこと九条天が近付いて来た。紡は慌てて、体裁を整えて、深々とお辞儀をした。 「お疲れ様です!九条さん!同じスタジオだったのですね!」 「そうみたいだね。今日はボク一人での撮影だったんだ。」 密かに付き合っている彼らだったが、違う事務所のマネージャーとアイドルが付き合っていることなど 公に出来るわけもない。また、お互いの休みは把握していても、共に仕事の細かなスケジュールなどは、 共演でもしない限りは、把握する必要もないと思っているため、まさか今日、同じスタジオで出会うとは 思っていなかったのだ。 「今日はもう、仕事は終わりなの?」 天が探るように、紡の瞳を覗き込む。 「はい、今日は皆さんを寮まで送って帰るだけです。皆さんで、今日は七夕祭りをされるそうですよ。 大和さんは飲むんだって、宣言してらっしゃいました。」 ふふっ、っと楽しそうに語る紡を見て、微笑ましく思うのと同時に、ちょっとだけ嫉妬した。 「ねぇ……ボクとは一緒に過ごしてくれないの?」 唐突に口に出した言葉に、天ははっとして口を押さえた。自分らしくもない……公の場で、誰の目が あるかも分からないのに、不意に口に出してしまった言葉に、天自身も驚いていた。 「いいですよ、九条さん。では、彼らを送ったら、また連絡しますね。」 ******* 二人が再度落ち合ったのは、天が隠れ家として使っているマンションの一室だった。もちろん、芸能人御用達ともなれば、セキュリティ管理も万全な場所しか選ばない。そして、何より 自分のプライベートに土足で踏み込まれることを嫌う天が、隠れ家に人を呼ぶなんてことは、紡以外に ありえなかった。 「お疲れ様、紡さん。」 部屋に入ると、出迎えてくれたのは、愛しい人の微笑みだった。絶対に外では見せる笑顔とは違う、 ファンサービスで見せる笑顔とも違う、優しい笑顔。 「天さんも、お疲れ様です。」 お互いの名前を呼び合うことが、貴重なプライベートな時間の始まりだった。 「ねぇ、紡さん、こっちに来て。」 天は紡をソファーへ座るように促し、天は自身も隣に腰を掛けた。 「あ、そうだ!天さん、実はさっき、お菓子買って来たんです。一緒に食べませんか?」 小さな箱の入った紙袋を、紡は天の前に掲げて見せた。そして、テーブルの上で、開封を始め、中から 取り出したものを、天の前に置いた。 真っ青なソーダ色のゼリーがまるで天の川を閉じ込めたような七夕ゼリーだった。パイナップルや オレンジ、そして星型の杏仁豆腐などを閉じ込めて、青いソーダゼリー、その下のココナッツミルク プリン、そして1番下の仕上げのマンゴーソース……。この季節にはぴったりな夏のデザートだ。 中に入っている果物が、まるで宝石のように煌めいて、夏のソーダゼリーとの光の屈折で、天の川に 閉じ込めた秘宝のように見えた。 見た目も美しいデザートに、二人はきらきらと目を輝かせて、食べることも忘れそうになっていた。 「七夕のこと、最近ではサマーバレンタイン、って言うらしいよ。洒落てるよね。」 ぽつりと天が呟いた。 「……――!?」 紡ははっとして、顔を赤く染めた。 「キミの気持ち、しっかりと受け止めたよ。ありがとう。」 ふふっ、と満足したかのように天は笑った。 (……バレンタイン……なんて言われたら、急に恥ずかしくなっちゃった……。) 早鐘を打つ胸の鼓動に気付かないふりをして、紡はデザートを掻き込んだのだった。 ******* 二人は、それぞれ風呂に入り、汗を流した後、リビングのソファーで寛いでいた。分刻みのスケジュールに追われることが多い彼らには、こうしてのんびりと過ごせる時間は、とても 貴重で、何か特に話をするというわけでもなく、お互いに沈黙を楽しんでいた。無理して何かを話す わけでもなく、静かに、ただ二人だけが存在している空間というのは、とても居心地がいい。 紡はスケジュール帳とにらめっこしており、天は英字新聞を読んでいた。天曰く、英字新聞や フランス語、他の言語で書かれている新聞というのは、自分の国で発行されている新聞とはまた違った 観点で報道されることもあるそうだ。その中には、思いも寄らなかった真実が報道されていることも あるという。 天は英字新聞を畳むと、紡が持っているスケジュール帳を取り上げて、目の前のテーブルに置いた。 「ねぇ、そろそろ、ボクの相手もして。」 天は紡の肩にことんと頭を落とした。紡の肩がぴくりと飛び跳ねると、天はそっと紡の腰に手を 回した。紡の肌からする石鹸の香りと、ふわりとしたネグリジェからでも分かる肌の柔らかさに、天の 中で繋ぎ止めていた理性の糸が切れた。 そして、顔を上げて、紡を抱き寄せ、彼女の顎を引き上げて、囁いた。 優しく、抱いてあげる――。
天は紡を抱え上げると、寝室まで運んだ。その間、ずっと紡が黙っていて、彼女の緊張が伝わって来る ――今夜は優しくなんて抱いてやらない――。
天はゴムを付け、自身の昂ぶった熱杭を、紡の秘部へと宛がった。先端だけで少し抜き差しを
「ねぇ、紡さん、今夜もボクの部屋に、戻って来てくれるんでしょう?」 ******* 七夕の夜、一年に一度だけ、逢瀬を許される。織姫が願い、そして紡ぎ出す、星の光が織り込められた羽衣の一部に、ボクたちはなれているのだろうか。 ボクが、彼女が紡ぐ光の糸の一部になれたら、それが何よりも嬉しい。 紡の寝顔を眺めながら、天はそっと、光を孕んだ紡の金色の髪に口付けたのだった。 |
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ネットでの初の公開分の天紡の小説は、R18指定🔞になりました。ちゃんと書けているか、めっちゃ 不安……😓少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。ちなみに、天くんの紡ちゃんの呼び方が変わって いるのは、完全にフィーリングです。天くんの余裕ないバロメーター的な……🤔❓ あと、七夕🎋🌌と誕生日🎁🎂🎉 が近いので、まぁどっちで上げてもいいよな……って思って。 そして、2人っきりとはいえ、こんなにベタベタで甘い天紡は、好きな人いなさそうだなぁ……と思い ながらも、完全に個人的な趣味で、イチャイチャ💕してもらいました。 最初の下りは、年相応の可愛らしさと、ちゃんと後ではいろいろ致してる大人びた部分とのギャップを 描きたくて、仕上がった感じです。 先のお話で、天くんらしい部分を持ったりっくんを描きたかったのを同じように、りっくんらしい部分も 持った天くんって部分も描いてみました。双子だな……っていう。 そして、イメージ違っても責任取れないので、自己責任でお願いします❗ 何でも許せる方向け。 天紡は幸せ🍀😊💕になってほしいし、天くんが一旦紡ちゃんの手を握ったら、絶対に離さないと思う。 (2018年7月14日完成) |